VISIONS

ビジョンと育成方針

Ⅱ/デザイナーの在り方

空間デザイナーというと、建築家やインテリアデザイナー、インテリアコーディネーターなどといった職種が思い浮かびますが、展示会デザイナーという職種はほとんど知られていません。そもそも展示会という業界が知られていないため、しょうがない側面もあるのですが、それでも、展示会のデザイナーは、業界の中ではとても立ち位置が低くなっています。それは多くのデザイナーが出展社から直接仕事を依頼されるのではなく、設営会社の社内デザイナーであったり、外注デザイナーであるため、デザインの発注元が出展社ではなく、「設営会社」になっているのです。どのような立場で案件に向かうか、ということは想像以上に大切な、重要なポイントになります。展示会業界で既にデザイナーとして活躍されている皆さんは、この状況に大きく頷いていただけるのではないでしょうか。当社では、直接出展社様から仕事を依頼されることで、デザイナーの立ち位置を高い場所に据えることにこだわっています。このことを本項ではお話しようと思います。


 1. 展示会におけるデザイナーの立ち位置

では次に、展示会業界におけるデザイナーについてお話しておきましょう。既に業界のデザイナーとして関わってきた方であれば実感されているはずのことではありますが、展示会業界のデザイナーは業界の中での立ち位置がかなり低い、と言わざるを得ません。これが建築・インテリアデザイン業界であれば、「建築家」や「インテリアデザイナー」という存在が、プロジェクトの中心に立ち、施主となるお客様を、プロジェクト全体を、牽引していくという図式が見られますが、展示会業界では、残念ながらデザイナーは設営会社の「下請け」となっていることがほとんどで、多くの場合、お客様のメインの窓口は営業担当が行い、設営会社内のヒエラルキーとしては、営業や施工担当が上で、デザイナーはその下の御用聞き程度に存在している場合が多くあります。
このようなデザイナーは、多くの場合営業が持ってきた案件の図面を要望通りに描き、それを営業に手渡します。営業はデザイナーが描いた図面を出展社に説明し、要望を聞き出し、それをデザイナーに伝えて修正をさせる、という流れです。多くの場合、デザイナーは現場に行って自身がデザインした物件の状況を確認することもなく、ましてや最終日に出展社に直に声を聴くことはありません。このような状況だと、デザイナーはただただ「業務をこなすだけ」の存在になってしまい、自身のデザインを検証しない以上、成長することもなくなってしまいます。残念なことに、これが日本の展示会業界におけるデザイナーの現状です。なぜこのようなことになるかと言えば、それはまず展示会ブースデザインという仕事が「超短期の空間デザイン」であることが挙げられます。毎週のように開催される展示会と、数百から数千の数に上るブースを数多くこなすようにするためには、どうしてもそのような体制になってしまいがちなのです。
しかしながら、当社では展示会のデザイナーはそのようにあるべきではない、と強く考えています。では、当社が考える展示会業界におけるデザイナーの役割について次項で解説していきましょう。
 

2.展示会系デザイナーの役割

展示会ブースデザインに限らず、空間デザインにおいて「デザイナー」は常にプロジェクトの中心であるべき、と当社では考えています。ブースデザインはシンプルなようでいてかなり神経を使って細かく考えることが必要です。そこには実際に図面を描いていく立場にしかわからない工夫や表現が数多く存在します。展示台の高さ、奥行、キャッチの言葉の内容と掲示する位置など、営業担当や施工(設営)担当には考えが至らない、細かなことまで考える必要があり、それは実際に図面を描く立場のものにしか決して理解できないのです。展示会ブースという仕事を、ただお客様(出展社)の要望通りにつくる仕事、として捉えるとこのような体制は必要ないのかもしれません。しかし、展示会のプロとして、出展社の出展成功を最優先に考える場合、デザイナーがプロジェクトの中心に立つのは絶対的に必要な条件なのです。そして、そのような立場にデザイナーが立つ以上、デザイナーにはデザイン以外に様々なことが求められます。それは、出展社を成功させるための様々なノウハウであり、姿勢となります。ただ、きれいなブースをデザインしたいだけのデザイナーには、展示会のデザイナーは不向きです。どのようにすれば出展社が成功するのか、そのためにブースがどうあるべきか、費用感は大丈夫か、お客様の商品はどんな特徴があり、どう見せれば伝わるのか、単にブースをデザインする以上のことがプロジェクトリーダーとしての展示会デザイナーには求められます。
当社では、ただ業務をこなすだけの従来のデザイナーではなく、出展社と直接会話し、その出展全体を牽引する立場であることを重要視しています。実際に、当社に依頼をしてくださる出展社の方々は、プロジェクトを成功に導いてくれる存在として、当社に大きな期待をしてくださり、問い合わせしてくださっています。そこに求められているのは、プロジェクトの成功であり、だからこそ、展示会終了時には、とても嬉しそうな笑顔と感謝の言葉を当社スタッフにかけてくださいます。
 

3.デザイナーの素養

では次に、そんな展示会系デザイナーには、どんな能力が必要なのかを考えてみましょう。先ほど、展示会ブースデザインには、図面を描くことなどの技術力は、建築設計・インテリアデザインに比べて簡単である旨をお伝えしました。確かに、展示会ブースの図面は建築設計でいうところの一般図レベルで問題ないため、平面図・立面図・断面図に加えて部分的な詳細図を描くことができれば十分に展示会デザイナーとしての基礎的技術は達成できます。技術力という点で、当社ならではの技術力、という点ではグラフィックデザイン能力が重視される、というのもあります。当社のブースデザインでは、壁面などのグラフィックデザインを重視しています。ですので、AdobeのイラストレーターやPhotoshopを使いこなすこと、グラフィックデザインの基礎知識を持っていることも重要になります。
しかし、それ以上に展示会ブースデザインという業務に携わる上で、重要と考えることがあります。それは、勉強力や向上心、プラス思考、といったそれぞれの担当者としての性格がなによりも重要なのです。これを展示会ブースデザイナーの素養と当社では表現しています。展示会ブースデザインに関する「技術力」に関しては、たとえ未経験であっても、半年も経てば比較的そのほとんどをマスターをしてしまいます。なぜなら、ブースデザインという仕事は次から次へと物件が発生し、同じことを繰り替えず業務だからです。1件1件の仕事がシンプルなので半年も繰り返せば簡単に習得できるものなのです。ですが、同時に毎回様々な出展社の商品・サービスに接するため、それぞれをお客様の立場になって考えられる力、出展に成功するかどうか、不安になる出展社を安心させる力、このような技術力以外の素養が展示会のデザイナーには重要、と当社では考えています。
 

4.現場を見て考えることの重要性

多くの業界関係者の方、デザイナーの方にとって、上記のような考え方は、会社としてはしてこなかったのではないかと思います。しかし、このような項目の必要性については、個人的には考えていた、という人は意外に多いのではないでしょうか。現在展示会に関わっているデザイナーやその関係者が上記のような立ち位置に立つためには、とにかく出展社の立場に立って物事を考え、かつ、常に現場となる会場を見て、考えることが重要、と当社では考えています。
当社への就職を考えようとする方々の多くは、まだ、上記のような能力・立ち位置にはないかもしれません。スーパーペンギンでは、当社への応募していただく時点での能力ももちろん考慮には入れますが、それ以上に、その方の「素養」、そして入社後の成長の可能性を考えます。デザイナーの方の場合、入社した後は極力図面で自身が携わったブースを観察してもらうようにします。展示会最終日にはお客様の反応を実際に見聞きしていただきます。その場面場面で何を考え、何を得て、どのように成長するのかが重要となります。